「セキュリティソフトを入れれば安全」の落とし穴
「ウイルス対策ソフトを入れているので大丈夫です」——ご相談の際、よく聞く言葉です。もちろん入れるべきですし、入れていない状態よりはるかに安全です。
ただし、セキュリティソフトが守れない領域があります。そこを知らないまま「入れたから安心」と思っていると、かえって危険です。今日は、その境界線を整理します。
セキュリティソフトが得意なこと
まず、得意分野を確認しておきましょう。
- 既知のウイルス・マルウェアの検出と駆除
- 危険なWebサイトへのアクセスをブロック
- 添付ファイルの検査
- 不審な挙動の検知(振る舞い検知)
これらは確実に効果があります。入れない理由はありません。
守れない5つの領域
1. あなた自身が入力した情報
フィッシングサイトでIDとパスワードを入力した場合、それは「あなたが自分で入力した」操作です。ソフトは止めません。
偽サイトのブロック機能はありますが、作られたばかりの偽サイトは登録が間に合いません。詐欺サイトは数日で使い捨てられるため、常に「未登録の新しいサイト」が存在します。
2. 本物のサービスを悪用する手口
以前ご紹介した、PayPayの正規の送金リンクへ誘導する手口がこれにあたります。
リンク先は本物の paypay.ne.jp。危険なサイトではないので、ソフトは何も警告しません。それでも、開けば送金画面が出ます。
3. サポート詐欺(電話での誘導)
「ウイルスに感染しました」という偽の警告画面が出て、表示された番号に電話させる手口。電話の会話は、ソフトの守備範囲外です。
しかも犯人は「サポートのため」と称して、あなた自身に遠隔操作ソフトを入れさせます。正規のソフトなので警告は出ません。
4. 設定の不備
- ルーターが初期パスワードのまま
- 共有フォルダが全公開になっている
- 2要素認証が未設定
これらはウイルスではないので、検出されません。
5. 期限切れ・更新停止
意外と多いのがこれです。契約が切れたまま使っている、定義ファイルの更新が止まっている。この状態のソフトは、ほとんど機能しません。
「入れているつもり」が一番危険です。有効期限を一度確認してください。
複数入れても強くならない
「心配だから2つ入れておこう」——これは逆効果です。
- ソフト同士が互いを不審なプログラムと誤認する
- 動作が極端に重くなる
- どちらも正常に動かなくなることがある
セキュリティソフトは1つだけ。 Windowsに標準搭載の Microsoft Defender も、単体で十分な性能があります。市販品を入れるなら、Defenderは自動的に無効になるので問題ありません。
ソフト以外に必要な3つ
1. OSとアプリを最新に保つ
脆弱性を塞ぐことは、ソフトでは代替できません。Windows Update、ブラウザ、Adobe Reader、Officeなど、更新は必ず適用してください。
2. 認証を強くする
2要素認証、できればパスキー。パスワードが漏れても入られない状態を作ることが、ソフトより確実な防御になります。
3. バックアップ
ランサムウェアに対しては、バックアップが最後の砦です。ソフトが検知できなかった場合でも、データさえ守れれば復旧できます。
「入れているから大丈夫」をやめる
まとめると、セキュリティソフトは必要だが十分ではない、という位置づけです。
- ✅ 入れる(1つだけ、期限を切らさない)
- ✅ OSとアプリを更新する
- ✅ 2要素認証を設定する
- ✅ バックアップを取る
- ✅ メールのリンクからログインしない
最後の1つが、実は最も多くの被害を防ぎます。技術ではなく習慣の部分です。
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