「共有パスワード」をやめられない会社への処方箋
「部署でひとつのIDを共有している」「引き継ぎ用のパスワードが、みんなの手帳に書いてある」——セキュリティの観点では避けるべき運用ですが、現実にはとても多いのが実情です。
そして「やめましょう」と言うだけでは、まずやめられません。理由があって共有されているからです。今日は、なぜやめられないのかを踏まえたうえで、現実的な移行方法を考えます。
なぜ共有をやめられないのか
現場の事情はだいたいこの4つです。
- ライセンス料の問題:ユーザーを増やすと課金が増える
- 担当者の不在に備えたい:休んだときに誰も入れないと業務が止まる
- アカウントを分ける機能がない:サービス側が複数ユーザーに対応していない
- 手間:全員分を作って管理するのが面倒
どれも「怠慢」ではなく、業務上の必然です。ここを理解しないと、対策は現場に受け入れられません。
共有パスワードの本当のリスク
やめるべき理由も整理しておきます。
1. 誰が操作したか分からない
トラブルが起きたとき、原因の特定ができません。故意でも過失でも、追跡できない状態は組織として危険です。
2. 退職しても変わらない
退職者がパスワードを覚えていれば、辞めた後も入れます。「変えればいい」のですが、共有パスワードは変更のたびに全員へ再周知が必要なため、実際には変えられません。これが最大の問題です。
3. 漏れたときに気づけない
個人アカウントなら「見覚えのないログイン」に気づけますが、共有だと誰かが使っているのか、他人が入っているのか区別がつきません。
4. 保管場所が甘くなる
共有パスワードは、付箋、Excel、チャットの履歴などに書かれがちです。ここが破られると全部漏れます。
現実的な移行ステップ
一気に全部やめるのは無理です。優先順位をつけて、段階的に進めます。
ステップ1:一覧を作る
まず「今、何を共有しているか」を書き出します。これだけでも意味があります。
- サービス名
- 誰が知っているか
- 最後にパスワードを変えたのはいつか
- そのアカウントで何ができるか(お金が動く?顧客情報が見える?)
ステップ2:リスクで3段階に分ける
優先度 | 対象 | 対応 |
|---|---|---|
最優先 | 金銭・顧客情報・ドメイン管理 | 個別アカウント化を最優先 |
中 | 業務システム、グループウェア | 順次個別化 |
低 | 情報閲覧のみのサービス | 共有のまま、管理を強化 |
全部をやめる必要はありません。 ネットバンキング、決済サービス、顧客管理、ドメイン・サーバー管理——ここだけは、何としても個別化してください。
ステップ3:個別化できないものは「金庫」に入れる
サービス側の制約で個別化できない場合は、パスワード管理ツール(法人向け)を導入します。
- パスワード本体は誰も覚えない・見ない(ツールが自動入力する)
- 誰がいつアクセスしたかログが残る
- 退職者のアクセス権をその場で剥奪できる
- 変更しても、全員への再周知が不要
これで「追跡できない」「退職後も入れる」「保管場所が甘い」の3つが同時に解決します。共有をやめられないなら、せめてこれを入れてください。
ステップ4:棚卸しを定例化する
年1回、一覧を見直します。人事異動の時期に合わせると習慣化しやすくなります。
今日からできる応急処置
移行に時間がかかる場合でも、これだけは今日やってください。
- 付箋・ホワイトボードに書かれたパスワードを剥がす
- チャットやメールに残っているパスワードを削除する
- 退職者が知っている共有パスワードを変更する(今すぐ)
- 可能なものから2要素認証を有効にする
特に3つ目。直近で退職した方がいるなら、その方が知っていたパスワードは全部変えてください。
導入と運用設計、ご相談ください
「パスワード管理ツールを入れたいが、どれを選べばいいか分からない」「現場に受け入れられる形で進めたい」——こうしたご相談を承っています。
BULLCOM Security では、共有アカウントの棚卸しから、管理方法の設計、社員への説明までご支援しています。あわせて、セキュリティ講習(座学 ¥49,800〜)で「なぜ必要か」を社員に伝えるところからお手伝いすることも可能です。
ルールを押し付けるのではなく、業務が回る形にすることが大切です。まずは現状をお聞かせください。お気軽にご相談ください。
