【実物】ブランド名にスペースを入れて検知を逃れる手口
当社に届いた詐欺メールの一覧を眺めていて、件名の書き方に妙なものが混ざっていました。
【i C l o u d+】自動更新のためのお手続きのお願い
iCloud+ ではなく、1文字ずつ半角スペースで区切られているのです。読みにくいのに、なぜわざわざこう書くのか。今日はその理由と、見分けるポイントを解説します。
なぜスペースを入れるのか
答えは単純で、迷惑メールフィルターの検知を逃れるためです。
フィルターは「iCloud」「Apple」「楽天」といったブランド名と、怪しい特徴の組み合わせで迷惑メールを判定します。ところが i C l o u d と書かれていると、文字列としては「iCloud」と一致しません。
一方で、人間の目は読めてしまいます。「アイクラウド」と認識できる。この非対称性を突いているわけです。
もっと見えにくい手口:ゼロ幅文字
同じく届いたメールに、こんな件名がありました。
【アプリバージョン更新のご案内】
一見すると普通に「【アプリバージョン更新のご案内】」と読めます。しかし実際には、文字と文字の間に「ゼロ幅文字」が挟まっています。
ゼロ幅文字とは、幅を持たない、目に見えない文字のことです。表示上は何も見えないのに、データとしては存在します。だから、
- 人間には普通の日本語に見える
- フィルターには全く別の文字列に見える
スペース挿入より巧妙で、見た目からは気づけません。
実物の中身
この iCloud+ を装ったメールの送信元は nevawipe.com でした。Appleとは無関係のドメインです。
誘導先は hxxps://medyumforum.com/aznlba。海外のフォーラムサイトのドメインで、おそらく改ざんされて誘導ページを置かれたものと思われます。
Appleからの正規メールは apple.com や icloud.com から届きます。件名の書き方以前に、送信元を見れば判断できます。
見分け方は「件名の不自然さ」
ゼロ幅文字は目に見えませんが、この手口を使うメール全体に共通する不自然さがあります。
1. 文字間隔がおかしい
i C l o u d+ のようなスペース挿入は、見れば分かります。正規の企業が、自社ブランド名をこんな書き方で送ることはありません。
2. 全角と半角が混在している
Amazon のように全角英字が使われていたり、PayPay と混在していたりするのも同じ狙いです。
3. 記号や絵文字で区切られている
【A・p・p・l・e】 のような書き方も見かけます。 共通するのは「ブランド名がそのままの形で書かれていない」こと。 これ自体が、フィルターを避けようとしている証拠です。
4. コピーして貼り付けると分かる
ゼロ幅文字が疑われる場合、件名をコピーしてメモ帳などに貼り付け、カーソルキーで文字を移動してみてください。何もないはずの場所でカーソルが1回余分に止まれば、そこに見えない文字があります。
結局、判断基準は変わらない
小手先の回避技術は次々と出てきますが、判断基準そのものは変わりません。
- 送信元ドメインの右端を見る(
apple.comで終わっているか) - メールのリンクは開かない
- 公式アプリを自分で開いて確認する
件名がどれだけ巧妙でも、この3つで対応できます。細工されているということは、それ自体が「フィルターに引っかかる自覚がある」証拠でもあります。
Apple・iCloudを名乗るメールへの対処
iCloudの契約や支払いに関する連絡は、iPhone/Macの設定画面から確認できます。
- iPhone:設定 → 自分の名前 → サブスクリプション
- Mac:システム設定 → 自分の名前 → メディアと購入
ここに何も表示されていなければ、そのメールは偽物です。Apple IDのパスワードは、メールのリンクからは絶対に入力しないでください。
フィルターに頼りすぎない
今回のような回避手口がある以上、迷惑メールフィルターは万能ではありません。すり抜けてくるものは必ずあります。
だからこそ、「受信箱に届いた=安全」ではないと考えてください。フィルターは負担を減らす道具であって、最後の判断は人がするという前提が必要です。
「これ、変な書き方だけど大丈夫?」
件名の書き方に違和感を覚えたら、それは正しい感覚です。BULLCOM Security の LINE 無料相談では、届いたメールのスクリーンショットを送っていただければ、偽物かどうかを確認してお返事します。
「なんとなく変」という感覚だけでのご相談も歓迎です。その違和感こそが、最初の防御線になります。お気軽にメッセージをお送りください。
